孤独のグルメ Season3-11 十日町ドライブインの牛肉の煮込みと五目釜めし

さて、前回の続きである。

新潟土産を楽しんだ五郎さんは、毛深いネタが売りの大熊さんとの仕事も無事に済ませた。このエピソードを見るたび商談中に空腹になりやしないかとヒヤヒヤしてしまうのは、おそらくSeason5の9話(いすみ豚の回)とシチュエーションが似ているからかもしれない。
五郎さんはその後、棚田を眺めていて空腹を覚える。水田を眺めて米が食いたくなるなんてマトモだ。誰も巻き込んでない。なんだか親のような目線で見てしまうのはどういうことだろう。

孤独のグルメ Season3-11 十日町ドライブインの牛肉の煮込みと五目釜めし

Amazonプライム・ビデオより引用

それにしても絶景である。この景色を見て腹が減るのは、それはそれでちょっとおかしいのかもしれない。

エキストラは大変

話は変わるが、「孤独のグルメ」に欠かせない存在としてエキストラがある。特に重要なのは店内にいる客の役だ。お店の日ごろの賑わいを再現しながら、それでいて五郎さんの邪魔をしてはいけない。食感を伝えるのに欠かせない、五郎さんの咀嚼音をかき消さないようにするのもあるだろう。

そのため、エキストラは楽しそうに会話する芝居をしながら、声を出せない。話し声は聞こえないのに、椅子を引く音や食器のぶつかる音は聞こえてくる。五郎さんの後ろで展開されるシビアなサイレント芝居も、「孤独のグルメ」の楽しみの一つであろう。

特に見ものとなると、下記の各エピソードだろうか。

エキストラの数で言うと、Season2の1話とSeason5の2話辺りに特筆すべきものがある。店内は客に埋め尽くされ、しかも吞兵衛ばかりで大賑わいの設定だから、芝居も大きい。「孤独のグルメ」を繰り返し見ていると、こういったエキストラ一人一人を観察したい欲求にかられる。

▼Season2の1話
孤独のグルメ Season3-11 十日町ドライブインの牛肉の煮込みと五目釜めし

Amazonプライム・ビデオより引用

▼Season5の2話
孤独のグルメ Season3-11 十日町ドライブインの牛肉の煮込みと五目釜めし

Amazonプライム・ビデオより引用

一方、観ている側まで緊張してしまうのは、子供が出ているシーンだ。とくに芝居という認識がない年齢の子が映っているときは、NGが出ないと分かっていてもドキドキしてしまう。例えばSeason3の9話やSeason4の5話がそう。どちらも、大人の声は聞こえないのに子供の声だけ響いているシーンがあるので、見逃さないでほしい。

▼Season3の9話

Amazonプライム・ビデオより引用(※矢印は引用者)

▼Season4の5話

Amazonプライム・ビデオより引用(※矢印は引用者)

最初は五郎さんを見ていたのに、繰り返し見るたびにどんどんエキストラのほうが気になってくる。複数のエピソードにまたがって出ている人やら、飲んでるように見えて飲み物が減ってない人。そんな色々は後日まとめたいと思うが、ひとまず今回はとても気になる一人のエキストラに注目したい。

一人戦うエキストラ

まずお断りしておくが、今回の内容はエキストラを貶しているわけでも、笑っているわけでもない。「孤独のグルメ」におけるエキストラがいかに難しく、いかにシビアであるかを共感していただきたく思って書いた記事である。

五郎さんが牛肉の煮込みを堪能し、カウンターの「ニセ大熊さん」がカツカレーにかぶり付いたころ、二人のお客さんが入ってくる。

孤独のグルメ Season3-11 十日町ドライブインの牛肉の煮込みと五目釜めし

Amazonプライム・ビデオより引用

ドライブインらしくバイカーの二人連れ。この二人には、店主が気まぐれに握り方を変えるおにぎりのエピソードがあるが、今回それについては別にいい。いや、同じものを注文したのに形が違ったらそりゃ不思議だろうとか、そもそも米の量は同じなのかとか、いち消費者として気になることがあるにはあるのだが。

二人のうち、黒いウェアの男性は、このあと五郎さんが食べているシーンでカメラに映り続けている。こういうときは、エキストラとして光栄なのだろうと思う。もちろん彼にピントは合ってないわけだが、わりと長いあいだ五郎さんと彼の二人芝居みたいになっているからだ。そしてそれは、大いに緊張するひと時だろう。NGは出せない。なにせ松重さんは、スタッフの多くが認める「NGを出さない」役者だからだ。

観返しポイント:
五郎さんが釜飯をかっこむ27分40秒あたり(「Amazonプライム・ビデオ」の場合)

だから彼は頑張った。最初は自然な会話の演技ができた。ええと、あれはどこだっけ? ああ、そういやあそこだね。ニヤリと微笑んで箸を口に運ぶ。でもまだだ、間が持たない。彼はたくわんをつまんで再び目の前の相手に話しかける。声なき声は聞こえたはずだが、相手は見上げてもくれない。視線が宙を舞う。

孤独のグルメ Season3-11 十日町ドライブインの牛肉の煮込みと五目釜めし

Amazonプライム・ビデオより引用

仕方なく彼は一人芝居に専念する。おお、この蕎麦おいしいね。何度もうなずき、眉毛を大きく上げて。しかし蕎麦を数本すすったり具を少量だけ口に入れたりと、食べ方はやけに上品だった。

五郎さんの「ごちそうさまでした」の声を背中に聞いても、彼は安心しなかった。果敢にもう一芝居やろうと顔を上げたのだ。相手の顔を見て、会話のサインを送る。しかし相手はやっぱり応えてくれない。彼は素早くそれを悟り、一人芝居を続けた。再び蕎麦の具を口に運ぶ、おお美味いねぇと背筋を伸ばす。少し芝居が大きく見えるのは、ヤケ気味だからだろうか。

背後で五郎さんが塩むすびを注文している間、彼はお茶を飲みながら、恨めしそうに二度三度と正面の相手を見た。しかし相手はなおも黙々と食べ続けている。もはやタイムオーバーだ。観念した彼は、同じく黙々と残りを食べるのだった。

五郎さんの周りの「孤独のグルメ」たち

無音の芝居をするとき、エキストラたちは事前にどんな準備をしているのだろう。
二人の関係性はこうで、会話の内容はこうでと、あらかじめ決めてはいるのだろうが、視線が合っていなければ会話を始めるタイミングもままならない。もし相手が初対面ならなおさらだろう。かと言って、肩やテーブルを叩いて相手に知らせるのも不自然だ。

このエピソードのバイカー達はどう見ても息が合ってなかった。話しかけたいのに、相手をしてくれない。まるで喧嘩中のカップルのようなやり取りが展開された。黒いウェアの彼にとっては間違いなくNGだったはずだが、そのまま放送されてしまった。彼には痛恨事だったかもしれない。

「孤独のグルメ」はその名の通り、一人のおじさんがご飯を食べているのを見るドラマである。だが、そのおじさんの周りでいくつもの「孤独のグルメ」が展開されているのを見逃すのはもったいない。会話をしているように見えても、実際は相手に届かぬ声なき声。エキストラもまた一人一人、孤独な芝居をしているのである。

▼「NGを出さない松重豊」についてはこちら

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